質屋って馴染みがある人もいれば、若い世代の人は、どんなことをするお店なのか?と全く知らないという人に分かれるはずです。

今では、当たり前のように銀行があったり消費者金融があったり便利な時代です。そんな便利な時代を最初に築いたのは質屋なのです。歴史のある質屋について、少しでも興味を持って頂ければ嬉しいです。

質屋ってどんなお店なのか?質屋の仕組みについて

リサイクルショップ、金券ショップ、ブランド買取店、骨董品商・・・これらと区別がつきにくく(実際に兼ねているお店が多いのですが)、普通の方は日ごろあまり接点がないお店、それが「質屋」です。

暖簾がかかっていてこぢんまりとした路地裏にあるイメージで、テレビの時代劇でしか見たことがないという方も多いでしょう。そもそもこれはどういったお店なのでしょうか。「質」とは「人質」などの言葉があるように担保という意味があります。質屋さんはつまり担保屋ということになりますが、では担保を取ってどうするかというと、その見返りにお金を貸してくれます。

その点では銀行などと同じように見えますが、貸し付けが小規模であり、現物を担保に取る点が違います。物品をお客さんから受け取り、鑑定し、価値を見極めてからお金を貸すため、融資の際のわずらわしい審査が一切ありません。

すぐにモノをお金に換えられるため、小回りの利く街の金融機関というわけです。またお客さんから受け取った物品は一定期間(三か月ほど)保管され、その所有権はお客さんのままです。この期間内に元金(借りたお金)と質料(ついた利息)を払えばまた手元に品物が返ってきます。お金を返せないまま期間が過ぎると所有権は質屋さんのものとなりますが、これを質流れと言います。

質屋の歴史は700年もの歴史がある

質流れになった品は店頭で売られるか、別のお店に販売されてしまい買い戻すことが困難になりますが、場合によっては質料だけを支払えば質流れを待ってもらえるケースもあります。かなりシンプル、悪く言えば原始的なシステムなのですが、それもそのはずでこの業態の起源は鎌倉時代にまでさかのぼり、700年の歴史を持つのです。


日本の狩猟採集時代が終わり、穀物が蓄積できるようになると、富の蓄積が可能となり貧富が発生しました。このときからすでに穀物の貸付があったようです。主にインテリ層である僧侶、寺院がコメなどを貸し付けて利息を稼いでいました。

さらに時代が下って貨幣(お金)が使われるようになるとそれは加速し、金貸しという金融業が盛んになります。これが鎌倉時代のことで、当時は「無尽銭」とも呼ばれました。しかし戸籍もしっかりしていない時代ですから利息等の取りっぱぐれも多く、また戦乱も続く混沌とした世相には確たる担保を必要とするようになり、質屋の形態が出来上がったと言われています。

とくに室町以来の戦乱が落着し、貨幣経済が浸透した江戸時代中期には全盛を迎えました。今でこそ服などはまず質にならないのですが、工業力に乏しい当時は農具や着物などの日用品も貴重であったため質草となり、着ている服や履物まで質入れして素っ裸にされる、というシーンが時代劇で描かれることになります。

江戸時代には士農工商あらゆる身分の人間が質入れにやってきましたが、「金銀細工」「大名家・将軍家の紋入りの物品」は法令で扱うことを禁じられていました。豪商が儲けた金貨(大判小判)を鋳つぶして地金にし、「儲かっていない」と脱税するケースが相次いだため金銀は扱えなかったのです。

また大名や将軍の権威の失墜を防ぐため、紋入りの物品も質にはなりませんでした。当時の店先には将棋の駒を擬した看板がぶら下がっていましたが、これは「店に入って進むと『金に成る』」と将棋になぞらえた江戸っ子の粋な洒落であったようです。

この当時には歌人が「露」という言葉を質に入れに来た、という逸話も残っています。質に入れている間は詠む歌に「露」を使えないという、これも江戸らしいユーモアのあるエピソードですが、それほど江戸期には質入れは一般的なことであったと言えます。

明治時代に質屋は一六銀行と呼ばれていた

明治時代には「一六銀行」という呼び名で呼ばれることもありましたが、これは「質=七」と解釈して「一+六=七」、「銀行=お金を借りられる」というものです。明治時代の台帳には、質草に対する貸し付けとして「布団1枚40銭、ナタやキセル1本35銭、掛け時計1円、掛け軸1本70銭、荷車一台4円」という記録が残されています。

 

1円=100銭で、当時の巡査の初任給が12円ほどですので、当時の人たちがとても物を大切に使っていたことが良くわかります。

近年の質屋とは?

近年では、日用品にあまり財産価値が無くなり気軽に質入れが出来なくなりました。加えて担保なしでの貸付を行う消費者金融などの台頭もあり、質屋はその数を減らしつつあります。そのため冒頭で述べましたように生き残るためにリサイクルや金券ショップを兼ねたりしているところが多くなっています。

 

消費者金融と違い、利息を払いたくなければ質流れという手段も取れるため、質草があって手元が苦しい場合には選択肢の一つとなるでしょう。また質流れの品が非常に安価で店頭に並んでいることもあります。これらは質草として質屋が鑑定したものばかりですので、品質や価値が保証されているという意味でとても安全な商品と言えるでしょう。こういったお店が近くにある方は、歴史に思いを馳せながら一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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